スクリーニング調査の設問例|
対象者の抽出精度を高めるコツをわかりやすく解説

30 August.2022 / スクリーニング調査

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調査対象者に特定の条件がある場合に、合致する人を集めるために実施するのがスクリーニング調査です。本調査で有用なデータを収集する上で役立つ手法です。

ここでは、スクリーニング調査の設問例を挙げながら、適切に対象者を抽出するためのコツを解説します。また、目標サンプルサイズを達成するための試算方法を紹介します。

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スクリーニング調査とは

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スクリーニング調査とは、アンケートなどの調査で対象条件に該当する人を抽出するために行う調査のことです。プレ調査や事前調査と呼ばれることもあります。

スクリーニング調査を実施する目的は、適切な調査対象者のみに本調査を実施し、データの精度を高めることです。

たとえば、40代女性の資産運用について調査したい場合、資産運用に全く興味がない人が混在していると、求めている調査結果を得られません。スクリーニング調査を行うことで、本調査のテーマに沿って狙い通りの調査対象者を集めることができます。

調査の流れは、「スクリーニング調査で対象者を抽出→対象者に本調査を実施」となります。スクリーニング調査からそのまま本調査に進む方法と、本調査はあらためて実施する方法の2つのパターンがあります。

スクリーニング調査の設問例と抽出の精度を上げるコツ

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スクリーニング調査で適切に対象者を抽出するには、いくつかのコツがあります。設問例とともに見ていきましょう。

1つの設問では1つのことを聞く

1の設問で問うのは1つのみとするのが原則です。これは、「この設問では何を問われているのか」をモニターが容易に理解できるようにすることで回答への負荷を下げるためです。また、集計をスムーズに行う上でも大切なポイントとなります。

例を見ていきましょう。

●車の購入意向を調査するためのスクリーニング調査の例

NG例)

「Q. あなたは直近1年間のうちに自家用車を購入したいと思っていますか。予算はどれくらいまでと考えていますか。」(1つのみ選択)

  • 購入したい(予算:〇円まで)
  • したくない
  • わからない

上記例では、購入意向・購入予定時期・予算の3つの軸が含まれているため、回答が面倒になり「わからない」に回答が集まりやすくなりがちです。こうした状況になってしまうと、適切に対象者を抽出することができません。

以下の例のように、3つの設問に分けることでモニターが回答しやすくなります。

改善例)

Q1.  あなたは自家用車を購入したいと思っていますか。(1つのみ選択)

  • 購入したい
  • 購入したくない
  • わからない

Q2 Q1で「購入したい」と回答した方に伺います。
あなたは、いつくらいに自家用車を購入したいと思っていますか。(1つのみ選択)

  • ~6ヶ月以内
  • ~1年以内
  • ~3年以内
  • ~5年以内
  • 5年よりも先
  • 時期は決めていない

Q1で「購入したい」と回答した方に伺います。
Q2. あなたが自家用車を購入する時の予算はどれくらいと考えていますか?(1つのみ選択)

  • 100万円未満
  • 100万円~199万円
  • 200万円~299万円
  • 300万円~399万円
  • 400万円~499万円
  • 500万円以上
  • 予算は決めていない

選択肢に幅を持たせる

選択肢が「YES/NO」の2択しかない場合、自分の感覚にフィットせずに回答しづらくなるケースがあります。人の感じ方には「程度」があるため、同じ「YES」でも「どちらかというとYES」といった幅があるものです。的確な回答を得るためには、選択肢に幅を持たせることがポイントです。

例を見ていきます。

●資産運用に関する意識調査のためのスクリーニング調査の例

NG例)

Q. あなたは資産運用に興味がありますか。(1つのみ選択)

  • 興味がある
  • 興味がない

改善例)

Q. あなたは資産運用に興味がありますか。(1つのみ選択)

  • とても興味がある
  • やや興味がある
  • どちらともいえない
  • あまり興味がない
  • 全く興味がない

このように選択肢に幅を持たせることで、モニターはより自分の感覚に近い回答を選ぶことができ、スクリーニングの精度向上につながります。

本調査の意図を推測できる設問は避ける

スクリーニング調査は、調査条件に該当するか否かを判断するための具体的な情報を引き出さなくてはならない一方で、本調査の意図を推測できる設問は避けなくてはなりません。

これは、「○○についての調査なのだろう」というように意図が推測できると、本調査に進めるようにモニターが事実と異なる回答をしてしまう可能性があるためです。こうしたバイアスを避けるには、モニターが容易に推測できないように設問を設計する必要があります。

例を見てみましょう。

●直近3ヶ月以内にドラッグストアを利用してA社の化粧品を購入した人を抽出したい場合

NG例)

Q. あなたは直近3ヶ月以内にドラッグストアでA社の化粧品を購入しましたか。(1つのみ選択)

  • 購入した
  • 購入していない

上記例では、抽出条件を容易に想像できる設問文となっています。

改善例)

Q1. あなたが直近3ヶ月以内にドラッグストアで購入したものを選んでください。(当てはまるもの全て選択)

  • 医薬品
  • ヘルスケア用品・衛生用品
  • 介護・ベビー用品
  • 化粧品・美容ケア用品
  • 日用品
  • ペット用品
  • 食料品・飲料・お酒
  • その他
  • 購入していない

Q1で「化粧品・美容ケア用品」を購入した方に伺います。
Q2. 直近3ヶ月以内にドラッグストアで購入した「化粧品・美容ケア用品」の種類はどれですか。(当てはまるもの全て選択)

  • スキンケア用品
  • メイクアップ用品
  • UVケア用品
  • ボディケア用品
  • ヘアケア用品
  • ネイル用品
  • その他

Q1で「化粧品・美容ケア用品」を購入した方に伺います。
Q3. あなたが購入した「化粧品・美容ケア用品」はどのメーカーですか。(当てはまるもの全て選択)

  • A社
  • B社
  • C社
  • D社
  • その他

このように設問内容を設計することで、モニターは本調査の意図を読み取りにくくなるため、正しい答えを集めやすくなります。

本調査の目標サンプルサイズを集めるための考え方

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スクリーニング調査は、本調査で必要となるサンプルサイズを考えて実施することが重要です。ここでは、本調査で目標サンプルサイズを集めるための考え方と試算方法を見ていきます。

回答率と出現率とは

目標サンプルサイズを集めるためのスクリーニング調査を実施するには、まず回答率と出現率について理解しておく必要があります。

回答率とは、調査を行う全体母数に対して回答を得られた割合のことです。たとえば、100人に調査を実施して70人から回答があった場合、回答率70%となります。

出現率とは、スクリーニング調査を実施したときに、本調査の対象条件に合致する人が現れる割合のことです。100人中30人が対象条件に合致する場合、出現率30%となります。

出現率は対象条件の細かさや厳しさなどで大きく変化するため、本調査の目標サンプルサイズを確保するには、回答率も踏まえながら適正な調査規模となるように設定することが大切です。

目標サンプルサイズを集めるための試算方法

目標サンプルサイズを集めるための試算では、「本調査対象者として確保しなければならないサンプルサイズ→そのために必要なスクリーニングの回収サンプル」を試算します。

本調査対象者を確保するために必要なスクリーニングの回収サンプル

本調査対象者
=スクリーニング調査の全体母数×回答率×出現率

例)全体母数10,000人×回答率30%×出現率20%=600人(本調査対象)

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600人の本調査対象者に調査を実施して回答率が70%だった場合、最終的に420サンプルを回収できるということになります。

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つまり本調査で約400サンプルを集めるには、スクリーニング調査の回答率が30%、出現率が20%、本調査回答率70%と仮定した場合、スクリーニング調査では10,000人を対象に実施する必要があると試算できます。

本調査で目標サンプルサイズを回収するための試算方法

回答率と出現率の考え方を用いることで、本調査の目標から逆算して、スクリーニング調査の適正な規模感を試算することができます。

例)
本調査で500サンプルを目標とする場合(出現率20%、本調査回答率70%と仮定)

・スクリーニング調査の回収サンプルサイズ×出現率20%×本調査回答率70%=500

・500÷本調査回答率(70%)÷出現率(20%)=3,571

本調査で500サンプルを集めたい場合、スクリーニング調査では約3,600サンプルを回収できるように設定する必要があるという試算になります。

基本の考え方とコツを押さえて的確に対象者を抽出しよう

スクリーニング調査は、特定の条件に当てはまる対象者にのみ調査を実施したい場合に必須となる手法です。モニターから具体的な情報を得なければならない一方で、的確に抽出するためには調査テーマを悟られないようにしなくてはならないという2つの目標を実現する必要があります。ぜひ本記事を参考に、抽出の精度を高められるように取り組んでみてください。

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