価格調査とは|
適正なプライシングに役立つ調査手法3つ

15 September.2022 / 調査手法

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商品・サービスの価格を設定するプライシングは、重要なマーケティング施策の一つです。価格設定を誤ると購入率の低下につながることがあるため、事前に価格調査を実施して適正価格を見極めることが大切です。

本記事では、適正なプライシングに役立つ価格調査の概要や代表的な手法を3つ紹介します。

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価格は「どれくらいの売上・利益が見込めるのか」ということだけでなく、商品・サービスに対する消費者のイメージにも多大な影響を与えます。この資料では、プライシングに役立つ調査手法や価格戦略のポイントを解説します。

マーケティングにおけるプライシングの重要性

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マーケティング戦略は、基本的に「4P」と呼ばれるマーケティングミックス(マーケティング施策を組み合わせること)で実行します。4Pは下記4つの施策の頭文字をとったものです。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(広告・販促)

商品やサービスの価格を設定するプライシングは、マーケティングミックスに欠かせない重要な施策です。

価格調査について見ていく前に、まずはプライシングの重要性や基本的な考え方を説明します。

商品の価値を決めるプライシング

生活者にとって、商品・サービスの価格は購入するかどうかを判断する大きな要素です。「この金額を支払うほどの価値はあるのか」「求めるベネフィットは得られるだろうか」など、様々な観点から支払う対価の妥当性を検討します。

プライシングは、このような生活者の心理・感覚を踏まえて「商品の価値」を定義するプロセスです。「高すぎる」「安すぎる」など、設定した価格が生活者の感覚と乖離していれば購入には至らないため、生活者視点で適正価格を探ることが重要です。

プライシングの基本的な考え方

プライシングでは、生活者の価格に対する感覚だけではなく、コスト(原価)や競合商品の状況など様々な要素を考慮する必要があります。

ここでは、プライシングで押さえておきたい基本的な方法を3つ紹介します。

<コストプラス>
商品の原価に一定の利益を上乗せして価格を設定する方法。販売量に応じて確実に利益を得ることができますが、設定した価格が生活者やターゲットに受け入れられるとは限りません。

<需要志向型>
生活者の価格に対するニーズや感覚を重視した価格設定方法。設定した価格についてターゲットがどう感じるかを調査し、適正価格を見極めます。生活者の感覚に合った価格設定が可能ですが、利益率が低い価格になってしまうこともあります。

<競争志向型>
競合他社が設定している価格を基準に、自社商品の価格を設定する方法。価格面で競争優位を得たい場合に有効で、一般的には競合他社の商品と同等またはそれ以下の価格に設定します。コストパフォーマンスの高さを強みにできる一方で、価格競争に陥ると利益が圧迫され体力を消耗するリスクがあります。
それぞれ一長一短があるため、市場における自社のポジショニングや競争環境に応じて複数の考え方を組み合わせるケースもあります。

適正なプライシングに役立つ価格調査

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商品の適正価格を見極めるには、価格調査を取り入れるのがおすすめです。

ここでは、価格調査とはどのような調査なのかを見ていきます。

価格調査とは

価格調査とは、マーケティングプロセスの初期段階で行う市場調査の一種です。生活者やターゲットにアンケート調査などを実施して適正価格を探り、その結果をプライシングの判断材料とします。

先述の通り、プライシングでは様々な要素を考慮しなければなりませんが、その際に企業視点に偏ってしまうと生活者の購買意欲を低下させる可能性があります。その点、価格調査を実施すれば、商品・サービスに対して生活者が妥当だと感じる価格や、高い購入率が見込める価格帯など、生活者視点での適正価格を定量的に把握することが可能です。

従来の価格調査の問題点

従来の価格調査では、以下のように買いたいと思う価格をシンプルに問う手法が一般的でした。

  • あなたは、この商品を〇〇円で買いたいと思いますか?
  • あなたは、この商品をいくらなら買いたいと思いますか?
  • あなたは、この商品の価格として妥当なのはいくらだと思いますか?

しかし、このような聞き方をされると、生活者はできる限り安い価格で回答する傾向があるため、有用な調査結果を得にくいという問題点があります。

また、生活者が買い物をするときは、「思ったより少し高いけれど、性能が良さそうだし予算内だから買ってみよう」など、ある程度の予算の幅をもって価格の妥当性を判断するのが一般的です。「〇〇円なら」と価格を特定させる聞き方では、生活者が許容する価格帯を把握することは難しいため、近年はその点を考慮した他の価格調査方法が主流になっています。

価格調査の代表的な手法3つ

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現在、価格調査でよく用いられているのは次の3つの手法です。

  • PSM分析
  • CVM分析
  • コンジョイント分析

各手法の特徴を一つずつ見ていきましょう。

PSM分析

PSM分析とは、商品の適正な価格帯を調査・分析する代表的な手法です。PSMは「Price Sensitivity Meter(価格感度測定)」の略語で、商品・サービスの価格に対する生活者の感覚的な捉え方を調べることができます。

この手法では、調査対象者に4つの質問に回答してもらうことで、「上限価格」「下限価格」「妥協価格」「理想価格」を算出します。

質問例を以下に挙げます。

Q1. 購入してもいいが、少し高いと感じる価格はいくらですか
Q2. これ以上高ければ購入しないと思う価格はいくらですか
Q3. 安くてお得だと思う価格はいくらですか
Q4. 安すぎて品質に不安を感じ始める価格はいくらですか

これらに数値(金額)で回答してもらい、集計データを元に各設問の価格帯別の累積分布を表す折れ線グラフを作成します。4つの折れ線グラフの交点から「上限価格」「下限価格」「妥協価格」「理想価格」を導き出し、それらを参考に適正価格を絞り込んでいきます。

CVM分析

CVMは「Contingent Valuation Method(仮想評価法)」の略語で、CVM分析では価格帯別の購入意向率の変化を調べることができます。

この手法では、あらかじめ呈示する価格帯を複数用意しておき、調査対象者に各価格の購入意向を段階的に評価してもらいます。

質問例を以下に挙げます。

Q. この商品が5,000円だったら購入したいと思いますか
「はい」と回答した人 → Q. では、5,500円ではどうですか?
「いいえ」と回答した人→ Q. では、4,500円ではどうですか?

このように価格を変えながら購入意向を聞き、価格帯別にどのくらいの購入意向率があったかを算出・グラフ化します。その結果を元に適正価格を見極めていきます。

なお、アンケートで年齢・性別・家族構成などの属性情報やライフスタイルについても聴取しておけば、「ファミリー世帯」「単身世帯」などセグメント別に傾向を分析することも可能です。

コンジョイント分析

コンジョイント分析は、ターゲットやユーザーにとって最も好ましい商品仕様を調べることができる分析手法です。

商品やサービスは、機能・価格・デザイン・ブランドなど様々な要素で構成されており、各々のニーズや好みに応じて最適な仕様のものを購入します。コンジョイント分析では、調査対象者に商品の仕様パターンを複数呈示し、それぞれの購入意向について得点や順位などで評価してもらいます。分析結果から各要素の重要度が割り出され、購入意向に最も寄与する要素を明らかにすることができます。

コンジョイント分析は価格に特化した手法ではありませんが、「価格に見合った仕様」や「価格の違いによる購入意向の変化」などを探りたい場合に有用です。

以下の記事も参考にしてください。
価格調査のやり方|PSM分析やCVM分析で価格受容性を調べよう

生活者の内面にある”値ごろ感”を把握しよう

生活者は、商品やサービスに対して各々の基準に基づいた”値ごろ感”をもっており、購買行動に影響を与えます。PSM分析やCVM分析などの価格調査を実施すれば、生活者の内面にある値ごろ感を定量的に分析・把握することができるため、自社商品の適正価格を見極めやすくなります。

ここで紹介した手法を参考に、価格調査を取り入れてプライシングの精度を高めましょう。

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